P.161,162 中古艇セーリングクルーザーを購入(目的に会ったアレンジ)

使用目的に合ったアレンジ
小網代泊地には陸電設備が無いので、今まで陸電から取っていたAC100V設備(エアコン、バッテリーのインバーターを設置。さらに、出力が大きいソーラー発電を新設することで、DC電源設備を充実して使用できるようにアレンジを加え対策してみました。

現状のエアコン設備に問題点を発見
 
エアコン設備はメーカーの工場艤装ではなく、日本での追加艤装として行ったようです。メーカーならこのようなやり方はしないと思います。オートビルジポンプは付いているのですが、エアコンのドレンが船内ビルジ溜りに流され、溜まった水が船内すみずみまで回り込み写真のように湿気と汚れを発生させていました。これではいくらエアコンを作動させても船内はドライになりません。しかもエアコン作動の度に海水ポンプのエアーを抜く作業等も追加されていました。
キャビンフロアー床下のビルジ溜りのハッチを開けてみました。オートビルジ用のオートマチックスイッチ(中央クロ色)、電動ビルジポンプストレーナー、ハンドビルジポンプホースエンド、そしてエアコン用ドレンホースエンドが設置されています。
この位置にエアコンのドレンを排出してしまうと湿気が多いときは1時間に数リットルのドレンが出てしまうので、電動ビルジポンプでは吸いきれません。床をめくってみて分かりましたが水垢と汚れとカビまで発生していました。これではエアコン設備が適切に機能していないどころか逆効果です。


設備されているエアコンはDometic115VAC/60hz 10000BTU(2500kcal)で、海水ポンプによって冷却する水冷式の冷暖房エアコンでした。右舷キャビンバースの下に装備されていました。


コンデンセーターキットによってドレンホースを取り除きました。このキットはエアコン用海水ポンプの排出圧により、エアコン本体に溜まるドレンを上部の細いホースで吸い上げてくれます。排出ホースの途中に入れ込むだけですので作業は簡単にできます。


エアーベントによってエアー抜き作業を無くしました。エアコン本体が喫水より低い位置にあるとサイホン現象により海水ポンプが海水を吸入してくれません。喫水より約40cm高い位置にエアーベントを設置することにより、サイホン現象を防止します。

バッテリー設備の増設とインバーターの設置
小網代泊地は港にアンカー係船する施設で、水道も陸電設備もありません。この船には補機(発電機)の設備はないので、この状態ではエアコンやバッテリーチャージャーが設備されていても使用できません。そこでインバーターでAC電源を作りエアコンを動かすことを考え、以下のように様
子を見ながらアレンジを加えていきました。
設備されているエアコンはDometic115VAC/60hz 10000BTU(2500kcal)定格電流で冷房時7A、暖房時9A。従ってインバーターは12Vで2KW( FI-S2003-12V、115VAC/60hz)の能力があるものが必要でした。さらに現状のハウスバッテリーをチェックすると、能力と容量が不足していることが分かり、バッテリー2個をブルートップバッテリーBT DC-5.5Lに交換し、さらに同じものを並列で1個増設しました。この船のエンジンはVOLVO DI-30F(30ps)、オルタネーターの出力は十分なためエンジンを作動させバッテリーを充電しながらインバーターでエアコンの使用を可能にするシステムを完成させることができました。


搭載されていたハウスバッテリーは通常の液状バッテリー「G&Yuバッテリー95D31R」でした。比重を調べて性能をチェックしたところ正常な能力を持っていませんでした。3年で寿命が来るのは少し短いのでは?


メンテナンスフリーでディープサイクルバッテリーの「ブルートップバッテリーBT DC-5.5L」に交換しました。20時間容量率で75Ahの容量とコールドクランキング電流975Aを持っていますので、能力や性能面で今までのバッテリーを大きく上回っています。


さらに隣のスペースに並列でバッテリーを1個追加し、日本製のインバーター「FI-S2003-12V」を100VAC出力から115VACに電圧変更して設置しました。DC用のバッテリーケーブルは十分な容量のサイズ2/0(68 mm²)を使用して最短距離で効率よく配線しています。


室内チャートテーブル横壁にDC/AC電源用スイッチパネルが設置されています。今までは陸電からの電源供給だけでしたので、このパネルに陸電からの電源を直接入れていました。


インバーターを設置したことで、陸電とインバーターによる2種類の入力を選択する必要が出てきました。そこでAC電源ロータリーセレクタースイッチ9009を増設して対策しました。


左からハウスバッテリーのバッテリースイッチ、ウインドラスのサーキットブレーカー、今回設置したインバーターON-OFFスイッチ。バッテリーの近くで理想的な配置です。

出力が大きいソーラー発電設備の新設
3個あるハウスバッテリーを常に満充電してバッテリーのコンディションを最良な状態にしておきたい。船内設備の冷凍冷蔵庫(DC12V)を夏の期間は家庭用冷蔵庫のように電源を切らないで使いたい。このようなことを実現するためにソーラー発電の利用を考えてみました。

ドジャーの前に適切なスペースがあり「NaturePower 単結晶ソーラーパネル65W」を設置。計算では最大5.4A出力するのですが、7月初めにテスターで測定してみたところ雲がない晴天で太陽が真上にある正午の測定では4.8A出力していました。

ブームの影に入ると0.8Aと全く出力しないのでブームを右舷に寄せておくことにしました。その後の観察で太陽の角度が30°傾いても4.6A出力、45°傾くと3.2Aになってしまいましたが、この位置でも一日約8時間は効率の良い充電ができそうです。


更にフレキシブルタイプのソーラー25Wを追加。障害物がないビミニトップに取り外し式で設置。計算では2.0Aですが、測定の結果は最大1.7A
でした。ビミニトップを外した時はスライドハッチの上に風で飛ばないようにショックコードで固定。台風が近くを通過しましたが飛ばされないですみました。

新設した65Wと25Wの両方のソーラーパネルによる1日の発電量は、好条件の昼前後で4時間充電すれば6.5A(4.8A+1.7A)×4時間で26A。そして45°傾くロスを30%減として4.5Aで約4時間充電すれば18A。8時間の合計で約44Aとなり、バッテリーを使った機器類をこの範囲で使うことが可能になりました。従って、曇りや雨の日も考えるとどのくらいの発電量になるか今後の観察で調査してみようと考えています。


エンジン始動用のバッテリーはメンテナンスフリーのディープサイクルバッテリーD31R型。性能を検査したら良好でしたのでそのまま使うことにしました。


バッテリーはお腹を空かせた状態が続くと性能は著しく落ちてしまいます。2Wのソーラーパネルですが、取り外し式で設置しました。


左に見えるグレーのボックスがBEP社「DVSRリレー」。エンジン始動用のバッテリーが13.7Vになるとハウスバッテリーを充電する電圧感応式リレーです。

イタリアIndel社冷凍冷蔵庫
-20°まで冷やすことができる冷凍冷蔵庫で消費電力は最大5A。サーモスタットによる温度調節機能付きですので、-20℃近くまで冷えてしまえば
0°設定で消費電流はかなり抑えられると考えます。真夏にロックアイスとドリンク類が家庭の冷蔵庫のように常に冷えていれば最高だと思-10℃に設定して電源を切らずに下船してみました。

 
1週間後、雨や曇りの日が多かったせいで、氷は半分ぐらい溶けていました。また、温度調整を-10℃にしていたので電力が多くかかったのだと思いますが、ハウスバッテリーの電圧は10.2Vまで下がっていました。そこでバス湯槽用のスポンジマットで中蓋を作り対策。さらに氷を長持ちさせるためのアルミ製容器を製作。そして温度調整を0℃に設定して下船してみました。
曇った日が多かった1週間でしたが氷は完璧に残っていました。バッテリー電圧は12.4V。その後の観察でも晴れの日が多いとバッテリー電圧は12.8Vをキープ。夏の間は電圧が12V以下に下がる事はありませんでした。設備費用はかかりましたが、常に冷えたビールを飲むことができました。(太陽が出ないときは風力発電?太陽も風も無いときは?今後の課題です。)

新設ガスコンロ+電子レンジ(ガスオーブン撤去)
標準仕様で付いていた一体型のガスオーブンコンロ。AC100Vを出力するインバーターを設置しましたので、電子レンジと入れ替えをするか大変
悩みました。ガスオーブンはいらないけどガスコンロは使いたいので一体型から切り離すことをチャレンジしましたが不可能。悩んだ末、使い勝手
を考えて電子レンジに交換することにしました。

 
大変高価なフランスENO社製のジンバルタイプ一体型ガスオーブンコンロでしたが、艇内でガスオーブンを使った料理はすることがないと考え撤去することにしました。
ENO社製ジンバルタイプのガスコンロを購入し、その下の部分に家庭用の電子レンジを固定して設置しました。普及している電子レンジは安価で色々な調理ができるので取り替えて大正解でした。

オートパイロットディスプレーヘッドの位置変更
Raymarineを取り扱う弊社としては少し残念だったのですが、B&G社の風向風速計とオートパイロットがメーカー艤装で装備されていました。他
社の商品を知る上では願ってもないことなので、歓迎して使ってみることにしました。しかし一つだけ使い勝手が悪いのでディスプレーヘッドの位
置変更をしました。


ステアリングボックス右側正面奥に見えるのは風向風速計のディスプレーヘッド。ヘルムスマンには少し遠いがクルーも見える良い位置と思います。しかし、右側中央部に見えるオートパイロットディスプレーヘッドは使いづらい位置に付いていました。


SEAVIEW社セイルポッドSP1BOXを使ってステアリングボックス右側に移設。オートパイロットを使う上で一番重要なことは、障害物等を見つけた時に素早くオート状態からスタンバイ(OFF)に切り替える操作ができる事です。

ドジャーのビニールメンテナンス
 
3.5年を経過するドジャーのビニールがだいぶ見づらくなっています。何もメンテナンスや保護をしないでセットしたままで置いておいたのだと思います。ここまで曇ってくると補修材では綺麗になりません。使わないシーズンには取り外すか、ビニール部分に紫外線よけのカバーを掛ける等の対策が必要です。
ビニール製品の汚れや紫外線のダメージから保護してくれるアイテムがあります。よく水を流し洗剤で汚れを落とします。次に#302を柔らかな布に付けて擦るようにして磨きます。最後に#301をスプレーして柔らかな布で拭きあげてください。汚れが付きにくきなり輝きを維持します。(年に3回は行ってください)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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