テキストP.45,P.46 スパンカー プラス スラスター

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9.スパンカー プラス スラスター(スラスターと組み合わせることで操船スキルがアップ)
THRUSTER(スラスター)は大型船には最もポピュラーなアイテムで、港での離着岸の際、船を制御する重要な役割をしています。近年、スラスターは機能の向上とデザインにおける大きな進歩によりメンテナンスフリーのオペレーションシステムを充実させ、大型艇のみならず小型FRP船舶の26フィートクラス(スペースがあればそれ以下でもOK)までの取り付けを可能にしています。言うまでも無く小型船においても港での離着岸や狭い水路などでの方向転換など様々な場面で船を制御するのにスラスターが有効であることは実証されています。

ここでは、さらにスパンカーを装備した船でボトムフィッシングを行う際にもスラスターが最適な補助役となるに違いないと考え実際に試してみました。ヤマハUF27にLEWMARスラスター最小モデル140TT2.2kwを装備し、その実際で説明しています。

基本編1:一般的なスラスターの利点
マリーナ等の停泊港での出入りは船を自在に操るレベルが必要で、まして風が強い時などにはベテランの船長でも要注意な作業になります。ここで紹介しているスラスターはバウに付けることで船の旋回能力を高め、様々な場所での離着岸や狭い水路等での旋回・変針をお手伝いするもので、運転席に設置したコントロールパネルやジョイステックレバーで簡単に操作することができます。
また、スターンに取り付けることも可能で、バウスラスターと組み合わすことで船を真横にスライドするように動かすこともできます。

1軸船の場合、バウスラスターが無ければ後方のポンツーンに完璧に着けることは困難です。バウスラスターを左舷に噴射して向きを直せば後は後進でOKです。

左舷から水を吸い込み右舷に噴射しています。プロペラタイプなので効率は抜群です。

基本編2:スラスターの有効性
まず初めに当マリンカタログP86、88、89を見ていただくと分かりやすいのですが、フィッシングボートにはスパンカーが有効でない船舶と有効な船舶(スパンカーボート達)があります。バウスラスターは船首を左右自在にコントロールさせることが出きるので、スパンカーが有効でない船舶に装備すれば有効性はアップします。ただし、もともと船首が風下に流れやすい船舶なのでスラスターの使用頻度が多くなりバッテリーの消費等も多くなります。一方、スパンカーが有効な船舶に取り付けた場合は、その効果は抜群でボトムフィッシングでの船の操り方がグンと楽になりスキルアップを実感できるはずです。通常スパンカーを展開していても船首は風下に向こうとします。従ってスパンカーに風が当たり反発して戻そうとしているため船には後ろに下がる力も多く働きます。もちろんこの状態で潮の流れに付いていくことも出きるのですが、スパンカーのセイル面積を変更できないため反発する力まではコントロールできないのが現状でした。しかしスラスターがあればその辺は自在です。風下に向く瞬間に戻すことも出来るし、向いてしまった船首をその船の位置で戻すことも出来ます。スパンカーの下桁コントロールのような自然な力(無動力)で船をコントロールすることは出来ませんが、わずかな動力で船を操ることが出来るわけです。自然を利用した(無動力)スパンカーと電動バウスラスター、この二つを組み合わせることでボトムフィッシングの釣果がさらに上がることは間違いなさそうです。

ヤマハUF27はスパンカーボート達の一員。マイボートスパンカーライトⅣを装備しています。トローリングはカツオからカジキ釣りまで、ボトムフィッシングはキス釣りから1200mの深海釣りまでチャレンジします。思いっきり楽しめそうな船であることは間違いないし、装備も本格的です。

 
室内の運転席コントロール部分。前からエンジンコントロール、トリムタブのコントロール、そしてジョイスティック型のバウスラスターのコントロールです。
アフトコクピットにある2ステーションボックスに位置したバウスラスター用のタッチコントロール。コントロールも2箇所操備、まさしく手前船頭用の設備です。

基本編3:実践編におけるスパンカーと組み合わせたスラスター操作テクニック
目的地に到着し、いよいよスパンカーを展開してのボトムフィッシングのスタートです。この日の天候は曇りで風は穏やかですが、スパンカーはその効果を十分発揮しておりスラスターと組み合わせて船を操ることが出きています。そこでその様子を実際の写真で紹介し、最後に2枚の写真とイラストで最も基本的な操り方を解説しました。

スパンカーが有効な船舶(スパンカーボート達)の利点
  
スパンカーを展開しないと船は風に対して真横を向いてしまいます。スラスターで風上に向かせることは出来ますがすぐに船首は風下に落とされてしまいます。そこでスパンカーを展開します。すると真横に向いていた船は少しずつ船首を風上に向け始めほぼ風上に向くことが出きました。

手前船頭でのスラスターを組み合わせたフィッシング
  
いよいよスラスターとの組み合わせです。スパンカーだけの場合、船首が風下に落とされる速さが潮流よりも早い時は、スパンカー下桁コントロールで事前に落とされにくくするのですが限度があります。しかしスラスターでコントロールすると一瞬で向きを戻してくれます。この写真では、手前船頭で通常はステアリングとコントロールを操作し船を操るのですが、風が弱いせいもありますがスラスターだけでだいぶ長い間仕掛けは潮流についていくことが出きています。但しポイントは通過してしまいましたが。

スラスターテクニックの実例を2枚の写真とイラストで解説しました。
写真A,BとイラストⅠを解説しています。
このケースは写真Aで船を停止し仕掛けを投入したところ、風を左舷側に受けてしまいました。潮流の方向は左舷前方から流れているため船首を潮流の方向に向けないと仕掛けが船下に入ってしまい釣りにならなくなってしまいます。このようなケースは比較的に良くあることで今までは前進して向きを変えるかスパンカーの下桁コントロールを利用して対処していましたが、その間にポイントがずれてしまい仕掛けを上げてやり直すことが多々ありました。スラスターがあればほんの1〜2秒でその場で変針できます。写真B

イラストⅡを解説しています。

風と潮流の方向はイラストⅠと同じなのですが、このケースでは風が強く船は風の影響を大きく受けてしまう場面とします。Aの位置で船を停止し仕掛けを投入します。右舷側に風が当たるようにしているため順調です。しかし風が強いためCの方向に船首が向いてしまいスパンカーだけでは戻しきれません。今までは前進して補っていましたが、そのバランスは非常に難しいテクニックを要していました。スラスターという瞬時に向きを戻すことが出来るもう一つの要素をプラスすればこのような場面でも船のコントロールに強い見方が加わったことになります。

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