P.76,77 パラシュート型アンカーによる流し釣り

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Ⅱ.パラシュートアンカーによる流し釣り
パラシュート型アンカーを利用した流し釣りは、風や潮流の方向、強さに合わせて、パラシュートを操ることで、船が流されるスピードをコントロールすることができるため、広い範囲の色々なポイントで船を安定させて流しながら釣りを楽しむことができるもっとも有効な方法です。

そこで当コーナーでは、実際に船で使用する前に、まずはパラシュート型アンカーの基本的な効果や操り方を理解してもらい、自船に合った適切なタイプやサイズを選ぶことができるよう解説した上で、実践編において様々な条件下でのパラシュート型アンカーの操り方(釣り方)を紹介しています。

1.パラシュート型アンカーの基礎知識
基本的な効果
① パラシュート(抵抗体)を使って抵抗をかけることにより、船が風に流されるスピードを遅くすることができます。
② パラシュート(抵抗体)にあたる潮流の抵抗により、船が引っ張られることで船を潮流の方向に流します。ただし風が無い場合か、風の影響よりも潮流が強い場合に限られます。
③ 船首からパラシュートを投入することによって、船首が風上に向くので船は安定し揺れを防ぎます。

以上のようなパラシュート型アンカーの基本的な効果を利用して、船が風に流されるスピードを調節して、釣りの仕掛けがほぼ真っすぐに下りるように潮流の方向と速さに合わせて船を操ることができます。

基本的な操り方
パラシュート型アンカーの操り方の基本は、風と潮流の方向が同じという条件を基準とした場合、下記のように操ることで船の流れるスピードをコントロールすることができます。この基本をマスターすることにより、いろいろな条件での流し釣りをすることができます。 

曳き索、ブイ連結索を長くして、オモリを重くすることによって、パラシュートは深く入り、船の流れるスピードを遅くします。逆にステンレスサルカンが水面に出るぐらいの位置で使用すれば、パラシュートがしっかりと開かないため船が流されるスピードを止める抵抗力は小さくなります。

FMSタイプの場合、パラシュートのセンターコードを引き込んでセットすることにより、パラシュートの直径が小さくなるので、抵抗が減り船の流れるスピードは大幅に速くなります。センターコードが付いていないタイプが多くありますが、パラシュート型アンカー本体側で抵抗をコントロールできる重要な要素です。

風に対して曳き索を船尾方向から2本どりして、船に風による抵抗をかけると、船の流れるスピードは速くなります。しかしこの場合、風を船の真横から受けてしまうと船は大きく揺れてしまうので、真横でなく少々横に向ける程度で抵抗をあたえたほうが船は安定します。

■基本的な船に合うパラシュート型アンカーの適合サイズ
パラシュート型アンカーは、荒天時の救命用シーアンカーとして1960年代に広く普及し、その後操業船の漁労設備としても使われるようになりました。それ以来、操業用パラシュート型アンカーとして船に合う形状に改良され、様々な漁業船で使用されています。しかしながら適切なサイズを求めるにあたって、確かなデータは何も残っていないのが現状です。
そこで実際にその当時使用していた中型船の船員や50〜500トン船を操る漁業者に話を聞いてみたところ、パラシュート型アンカーのサイズ(直径)は船の全長の40〜50%が適切ではないか、という声がほとんどでした。
今現在、FRP漁船を含む全ての小型フィッシングボートにこの数値をそのままそっくり当てはめることは無理でしょうが、操業用のパラシュート型アンカーの適切なサイズは、総合的にみて、船の全長の30〜50%の範囲にあることは間違いないようです。

2.パラシュート型アンカーによる船の流し方(釣り方)
流し釣りには、対象魚によって広いポイントを探りながら釣る場合もあれば、浅い釣り場でエンジンを止めて静かに釣る場合などもあります。パラシュート型アンカーを使用すれば、船をできるだけゆっくり風下に下げ投げ釣りをする時や、潮流の方向に船を流し広範囲を流し釣りする時などに大変便利です

パラシュート型アンカーによる船の流し方の基本は、潮流の方向に潮の流れよりもやや遅く船を流し釣りの仕掛けがほぼ真っすぐに下りるようにパラシュート型アンカーで船のスピードを調節することです

潮流が止まっている時や風と潮流の方向が同じ場合
潮流が止まっていて風だけの場合、通常の方法(曳き索を船の長さ以上、ブイ連結索がパラシュート直径以上)で流します。潮流がある場合は、釣りの仕掛けが真っすぐに下りるようにパラシュートを操り、船が流れるスピードを調節して流します。

❶船の流れるスピードが速い場合、パラシュ ートを沈め抵抗を掛けます。
❷船の流れるスピードが遅い場合、センターコード(FMSタイプ)を引き込んでセットして抵抗を抜きま す。
❸センターコードを引き込んでも船の流れるスピードが遅い場合は、ステンレスサルカンが水面に出るぐらいの位置で使用します。

風と潮流の方向が逆(向かい風)の場合船は、風により潮流の方向と逆に押し返されることになるので、パラシュートにあたる潮流の抵抗により船を引っ張ることで、船を潮流の方向へ流します。この条件でのスピー ド調節は難しく、風が弱く潮流が速い場合は、センターコード(FMSタイプ)で抵抗を抜いて流しますが、 風の強い場合には、だいぶ大きなサイズのパラシュートが必要になってきます。

風と潮流の方向が異なる場合
風と潮流があれば船は、受ける影響が強い方に流れます。風が強ければ風下に、潮流が強ければ潮下にということになります。このような時、①の船のように曳き索を船尾方向から2本取りして船首を風上に向けることによって船は安定し、水面下の潮流があたる面積が増えるので潮下へ流れようとします。同じ条件で②の船のように船首を潮上に向けると、潮流による影響が少なくなり、風による影響が増えるので船は風下へ流れようとし、船は横方向から風を受けるので少々不安定になります。このように風と潮流の方向が異なる場合、釣りの仕掛けは潮下に下りていくため、①の船のように曳き索を船尾方向から2本取りして船首を風上に向けて船を安定させ、あとは、釣りの仕掛けが真っすぐに下りるようにパラシュートを操り、船が流れるスピードを調節して流します。
※スパンカーがある船は、常に船首を風上に向かせることができるので、船は安定して同じ方向に流れていきます。

風と潮流の方向が向かい風で異なる場合
船は、パラシュートにあたる潮流の抵抗により、潮下の方向に流れようとしますが、風により風下にも流されようとします。この場合にも①の船のように船首を風上に向けて船を安定させて潮流の方向へ流します。あとは、釣りの仕掛けが真っすぐ下りるようにパラシュートを操ってスピードを調節して流すのですが、風の影響がある場合には、風で押し返 される船を、潮流の方向に引っ張るだけのだいぶ大きなパラシュートが必要になります。②の状態のまま流す方法ももちろんあるのですが、風の影響がある場合には、船は風下に対して左右に振れやすくなるため、釣りの範囲が増える利点はあるのですが、流す方向やスピードのコントロールが不安定になりますので、風と潮流の方向が異なる場合は、曳き索を2本取りして船首を風上に向けたほうが船をコントロールしやすいことになりますやはりこの場合にも、スパンカーがある船は、船を安定させ同じ方向に流すことができます。

パラシュート型アンカーを投入する位置                ※ポイントの端から端まで流すようにしましょう。

広い範囲のポイントを流す場合、風の方向と強さ、潮流の方向と速さなどを、自船でよく調べて適切な位置よりパラシュート型アンカーを投入して流し始めます。1回目はなかなかうまくいかないこともありますが、2〜3回操り方を繰り返すことにより、広い範囲のポイントの中の、さらによく釣れる狭いポイントの上でも流せるようになります。パラシュートを投入してしまうと、流すコースの移動は大きくできないため、投入する位置は最も重要な要素となります。(投入、引揚げなどの作業方法は (取扱い説明書を参照ください。)

海の状況が下記のような時は、パラシュート型アンカーによる流し釣りは出来ません。
●波が高い時。
●風が強い時。
●潮流が速すぎる時。
●風下、潮下に障害物や浅瀬がまじかにある場合。
●船舶の航路内や航行の妨げになる場所。
●流し釣り、他の漁労中の船舶の邪魔になる場所。

ONE POINT ADVICE
引揚げ作業の時は、引揚げロープをたぐり寄せブイ側から引揚げるのですが、船が前進するとプロペラや舵に絡みやすいので、少々後進をかけ作業するようにして下さい。

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